前回の準備編に引き続き,今回は,初めての富士山に弾丸登山した感想について,体験記形式でまとめさせていただきたいと思います。
これから富士山に登山しようと考えている方で,特に初心者の方は,是非参考にしていただけたらと思います。
なお,こちらは2018年に登ったときのものです。
目次
富士山に弾丸登山する際の日程
今回の富士登山は7月の末に行いました。
このときの日程ですが,「弾丸登山」と呼ばれる形式を採用し,一睡もすることなしに5合目スタートで富士山に登ってから降りてくることとなり,御来光(頂上での日の出)と頂上の頂上(剣が峰)を目指します。
なお,五合目までは高速バスを利用します(富士山はマイカー規制あり)。
参考
帰る時刻がわからないので,下山が近づいたときに乗れるバスを探してギリギリで予約するようにしましょう。
行きは満員ですが,帰りの便は数時間前からでも予約が可能です。
例えばバスタ新宿から出ている高速バスを利用すれば,5合目まで2時間30分程度で行くことができますし,料金は片道2,700円程度で済みます。
思っていた以上に速くないですか?安くないですか?
富士山に登るルートは全部で4つの道筋が知られていますが,私は初心者ということで,一番容易だとされる吉田口から登頂するコースを選択しました。
かかる時間と途中に点在する山小屋などの関係は以下の通りです↓↓
参考
なお,このマップは非常に便利に使えましたので,カラー印刷してクリアケースにでも入れて持っていくと重宝しますよ。
時間については公式のものと一部異なります。
五合目(2305m)到着時の様子
今回は高速バスが予定時刻よりも早く着いたので,19時頃に富士山5合目に居ました。
この時点でもう,こんなにも美しかったです。
バス内もそうでしたが,ものすごい外国人の数でした。
日本人の方が明らかに少なかったですね,流石は世界文化遺産ですね!
富士山のトイレはほとんどが有料ですが,ここ五合目の一番下にあるトイレは無料なんです(しかも一番きれい)。
用を足したら,明るいうちに装備を確認しておきましょう!
なお,高山病にかからないよう,五合目で1時間ほどゆっくりすることで,身体を高山に慣らすことが大切です。
その間は,夕飯を食べたりお土産を見たり,喫茶店にも入る余裕がありましたね↓↓
食事は「富士山みはらし」で食べました。
20時30分がラストオーダーと言っていました(朝は7時30分からだとも聞きました)。
かわいい子がお店番をやっていて,登る前から元気になりました(笑)
私はハヤシライスを頼みましたが,これが無茶苦茶おいしかったです↓↓
友達はカツカレーやソバを頼んでいましたが,カツは衣がサクサクでこれまた美味しいと絶賛でした。
山頂に早く着きすぎても御来光を待つまでに身体が凍えてしまいますし,遅すぎると山道の途中で御来光となります。
ほどよい早さでのスタートが望ましいでしょう。
なお,この日の日の出時刻は「4時52分」とアナウンスされましたので,「20時30分スタート」に決めました!
15時間と30分前です。
入山の地点では「富士山保全協力金(1,000円)」を収める場所があり,支払うと富士山の登山にまつわるガイドブックと木札がもらえます↓↓
装備品のリストを見て,忘れたものがあれば近くのお店で買いましょう。
また登山時のマナーなども載っています。
早めにもらっておいて,休憩前に読んでおけば良かったですね。
五合目でやったことをまとめましょう↓↓
- トイレに行く
- 1時間程度身体を慣らす
- 食事をとる
七合目(2700m)まで
五合目から七合目までは,楽しい時間の連続です。
「月が自分たちの真横に見える!」とか,「安全指導センターのおっちゃんの迫り具合が半端ない!」などと冗談を言い合いながら,自分の中で,「思ったよりも楽しく過ごせそうじゃないか」感が漂います。
なお,安全指導センターで借りられるヘルメットですが,2,000円をデポジットとして払い,帰りに返金されます。
歩きながらすれ違う周りの外国人たちはフレンドリーに話しかけてくれますし(富士は9回目の在日スペイン人の方とかツワモノぞろいでした),「ガンバロウネ」と勇気をもらいました。
「クーリッシュが400円か!」とか,山小屋の従業員たちの苦労もよそに平地気分でいた自分ですが,これから徐々に日本最高峰の洗礼を受けていくことになります。
ここまでで,登り出してから約2時間が経過しました。
七合目までの様子をまとめると,
- 安全指導センターでヘルメットを借りないかと迫られる
- すごく楽しい時間が流れる
- 夜のアウトドアに目覚めそうになる
となります。
八合目(3100m)まで
富士山の七合目から八合目まではやや辛く,傾斜が大きな岩の道を進むことになります。
少し肌寒くなってきたので,フリースを着ました。
ちょっと山登り感が出てきましたが,まだまだ富士山の辛さはこんなものではありません。
花小屋から始まって,全部で7つの山小屋があり,大体10分ぐらい歩くと1つ出てくるペースでしょうか。
すぐに灯りが見えるので安心です。
「なんて初心者に配慮されたルートなんだろう」と思うことでしょう。
なお,トイレは200円で使えます。
敢えて急がないようにしようと,山小屋ではなるべく座って小休憩を取るようにしました。
外気の状態については,七合目のトモエ館に温度計があり,それによると12.5℃でした↓↓
富士山に4回登った経験のある友達に言わせると,「ここまで天候に恵まれた日はなかった」とのこと。
実際,ここまで半袖Tシャツ1枚で歩けるほどで来ています。
八合目の入り口,太子館に着いたときは0時を過ぎていました↓↓
山小屋にはいろいろ名前が付いていますが,この山小屋は,聖徳太子の甲斐の黒駒伝説に由来したものだと思われます(富士山と馬は歴史的に深い関わりがあるため)。
八合目までをまとめると,
- 山小屋が頻繁に登場し,初心者でも安心
- 「登山したなぁ」と気持ちよく感じられるのはここまで
のようになります。
本八合目まで
ここまでくるとかなり過酷さが増してきます。
八合目の後は九合目だと思っていたのですが,実際に着いたのは「本八合目」。
「いったいいつまでが八合目なんだ!」
心でこんなふうに叫んだのは,実は七合目でもありました。
しかし,その嘆きの回数がここにきてグンと増した感じです。
先を見ても,遠くの方にぽつりと山小屋の灯り。
灯りが見えないときだってあります。
そのときの心細さといったら・・・。
気温はグッと落ちて一桁で,フリース+シェルパーカー(マウンテンパーカー)を着ています。
手袋もしないと寒い状況です。
「本八合目の入り口にある2つ目のトモエ館でシーフードヌードルを食べよう」と友達と約束し,それだけを楽しみに一つ一つ山小屋を越えていきます。
七合目と比べて,だいぶ一つ一つの山小屋の間隔が長くなっていて,それが苦痛でしたね。
ようやく本八合目の入り口に着いたときの時刻は2時30分過ぎ。
普段23時に寝ているという同行者は,眠さと寒さでよくわからない状態になっています。
そのせいからか,すごく温かくて塩っ辛いものを食べたくて,ぬるいお湯で不味いはずのシーフードヌードル(600円)がこの登山で忘れられない格別の一品と化しました↓↓
まだ頑張れる,行こう。
そんな気持ちで九合目を目指します。
吉田ルート頂上まで
本八合目から少し行った御来光館を最後に,残りの1時間ちょっとはノンストップで登ります。
九合目は何やら石碑みたいなのが建っているだけでしたし,その前後で特にルートの風景が変わることはありません。
ここまで来ると,須走ルートからの合流者や,御来光を見ようと起きだした山小屋の人たちが交じり合って,上記画像のように大変な混雑具合となります。
人間歩き続けて疲れてくるとイライラしてくるもの。
自分の横を,強靭な肉体を持つ外国人が(女性も含む)ザンザン抜いていくのを見て,「ここは追い越し禁止だろうが」と小言の一つも言いたくなりますが,そんなことに構っている余裕はありません。
とにかく震えるほどに寒いのです!
「夏なのに,こんな寒さを経験できるなんてすごいぜ,まったく。」などと後から振り返ればよい思い出にもなりますが,登っている本人は,寒さと疲労と眠さでほぼ死に体です。
この混雑っぷりがほどよいペースを作り出してくれるとお思いでしょうが,後ろを気にしたり,色々な会話が聞こえてくるので精神的にかなり参りましたね。
後ろのドイツ人女性と日本人美容師(富士山で初めて会った2人)が会話している中で,
独♀「My husband is in Spain.」
日♂「ハ,ハズバンド?」
と,突然それまで知らなかった夫の存在を知らされて,日本人男性のテンションがガタ落ちだったのが面白かったですけれど。
時刻は4時15分,日の出を迎えてはいませんが,すでに空はここまで明るくなってきています↓↓
この光景を見て,周りの人の登るスピードが上がりました。
「今のペースで十分,頂上で御来光が見られますよ!」という,富士山の指導員みたいな人の声が響き渡ります。
とはいえ,この位置から頂上までの距離を15分で登り切ることになると誰が想像できましょう↓↓
ですが,案内員の言った通り,実際15分で確かに登れたわけですが。
吉田口頂上と御来光
吉田口の頂上に着いて時計を見ると,あと10分で御来光です。
凄い量の雲海ですが,人の数も同じくらい多く,ですがあふれるほどではありません。
ちなみにこの吉田ルートは御来光を見るのに適したルートで人気があります。
そして,予想よりもちょっと早く4時45分頃,ついにその瞬間が訪れます。
「あ,見てっ!」心待ちにしていたかのような声を,自然と発してしまった自分が少し恥ずかしかったですが,確かに見えました。
水平線の向こうから,来たる光が↓↓
何とも言えない暖かな空気があたりを包むと,不思議ですね。
頬に触れる空気から,世界が始まる感触がしました。
こんな岩肌も,どこか海外の冒険のワンシーンのようです↓↓
しかし,これでもまだ今回の富士登山の目的の半分しか達成していません。
実は吉田口の頂上は3,710mです。
そうです。
この位置だと,あと66m分足りないのです。
つまり,富士山の真の頂上はここではありません!
よって,これから1時間30分かけて,いわゆる「お鉢巡り」をして頂上の頂上である剣ヶ峰を目指します。
剣ヶ峰(3776m)を目指して
剣ヶ峰までは行くだけなら45分ですが,下山するにはまた今の位置まで戻ってこないといけません。
そのため全部で1時間30分(45分×2)かかることとなります。
さらに,上の画像を見ればわかる通り,最後の傾斜は鬼のような角度が付いていて滑るし,弱った身体ではかなりきつい難所です。
もちろんこの時点で下山を選択される方も沢山いましたが,「今回は天候にも恵まれたし,あと1時間30分で剣が峰まで行ける距離に来ているチャンスを逃したくない!」という気持ちから,行くという選択をしました。
とはいえ,こういったタイプの動機は,ベテランの友達曰く一番危険とのこと。
確かにこの時の私はお腹が痛かったり,頭も痛くて手がビリビリしたりしていました。
友達の経験によると,高山病を発症したのは過去に2人いて,その1つはこのお鉢巡りの最中であり,もう1つは下山し始めた直後だったりしたそうです。
みなさま,体調が悪い時は賢明な判断をするようにして下さい(私は何とか無事にやり遂げましたが)。
とはいえ,実際歩いてみると景色の美しいところが多いです!
独特の景観が広がります。
富士の樹海もばっちり↓↓
ですが,自分の体調はこの時が最悪で,下山するときにはもうカメラを回す気力すら残っていませんでした。
「もう死んでもいい」という気持ちで,なんとかたどり着いた剣ヶ峰では,写真撮影をするためにみんなが列に並んでいます。
この待ち時間が非常に長く,30分以上はかかった感じです。
でも,できあがりの写真は非常に良く,並んでも待つ価値はあると断言できます↓↓
2方向から撮ってもらいましたが,こちら側からのショットがお気に入りです。
富士山を下山する
再び吉田ルートの頂上まで戻ってきて,トイレと飲み物休憩です。
なお,富士山の自販機ではコーラ1本が500円します。
物珍しさからみんな写真を撮っていましたね。
値段についてはYouTubeで観て知っていたという人もいましたが,ここの紅茶家伝は美味しかったです。
さて,下山のルートは登るときとは異なります。
ひたすら滑る砂と岩の入り混じった砂利道を,4時間程度かけて下っていきます。
その間にある休憩所はたったの2つ。
しかも片方は売店がなく,ただのトイレ目的でしか使えません。
下りの道中は,足をくじきそうになったり,雲で終わりが見えず,さらには強い日差しなので日焼けとの闘いになります。
汗だくで,さらに筋肉の疲労がハンパないです。
太陽が照っていると体内時計が活性化されるのか,不思議と眠気はありません。
ですが,確かな身体の痛みは下山が実は一番辛いということを教えてくれます。
まるでこんなおもちゃの駒の1つになったように,このような動きを20回は続けたのではないでしょうか。
下山した翌日の筋肉痛が脚部に集中しているのも,明らかにこの下山のダメージのせいです。
「登りに比べて早く帰れてラッキー」とは経験者は誰も言わないはずです(笑)
下山して,今度は「五合目レストハウス」というお店で食事をしました。
5,000円札が詰まるというハプニングがありましたが,こちらの店員さんも可愛らしい方で,大変に癒されました。
もちろんカツカレーのお味も良かったです↓↓
行きに食べたハヤシライスと比較しますと,味自体は「キッチンみはらし」ですが,店員さんのかわいらしさは「五合目レストハウス」の勝利ですね。
まとめ
以上,素人の私が,ベテランの友人に連れられて富士山の御来光と剣ヶ峰の山頂を成功させた体験記でした。
今回の日程を振り返ってみますと,
- 19時:五合目着,食事
- 20時30分:登り始め
- 4時45分:御来光
- 7時15分:剣が峰で撮影
- 8時30分:下山開始
- 12時:五合目着,食事とお土産
- 13時:バスで帰路
となります。
ほぼ24時間フル稼働しましたが,その分,帰宅してから沢山眠ったというわけではありませんでした。
ただ,今でも残る脚の疲労感と日焼けの跡が,富士山の過酷さを思い出させます。
ですが,登頂に成功した写真を見たり,SNSに載せた写真に対する周りの友達の反応があまりに良いので,後から嬉しさが込み上げてくるタイプかもしれません。
たった一度の登山で何かが変わるわけでもないですが,それでも,今回の体験は人生の中でとても忘れがたいものになりました。
誘ってくれた友達に心より感謝しています。
読んでいただいた方にも,富士登山が良き思い出となりますことを!