今回ですが,象印の炊飯器を「炎舞炊き」に買い替えました。
これまでも同社のものを使っていて,別に使い勝手や味に不満はなかったのですが,内釜のフッ素被膜が剥がれ始めていて,内釜だけ買うのもあれだし,毎日食べているお米なだけに上位機種の実力をここらで知っておくのも悪くはないと考えたのがきっかけです。
以下で両者を比較しながら,炎舞炊きの実力に迫っていきましょう!
象印と炊飯器の関係
象印と略していますが,実際は「象印マホービン株式会社」です。
マホービンとは魔法瓶のことで,本社は大阪にあります
と聞くと通常は「ふーん」で終わってしまいますが,この一文に関しては深く突っ込んで学んでおく必要があります。
まず魔法瓶からになりますが,内側と外側の2重構造を持っていてその間が真空状態になっているので熱の移動を妨げることができるのが特徴です。
媒体を介さなければ熱分子は移動することができません。
さて,この発明品ですが,歴史的には1881年にドイツでその原型が生まれて,同国で1904年に商品化されています。
日本では1912年になって八木亭二郎が魔法瓶を商標登録したことが最初のようです(参考)。
当時は国内ではなく,生水が手に入りにくい東南アジア諸国において多くの需要があったようですが,ガラス職人が多く住んでいた大阪だっただけに,真空状態を扱う魔法瓶との相性は良好で,大量に製造されては輸出されるようになりました。
管理人より
真空と聞いて,ギターのアンプなどに使われる「真空管」という電球みたいなものを想像した方もいらっしゃるでしょう。最近だと,窓ガラスにもそのような工夫が見られ,そちらは遮熱だけでなく遮音にも効果があるとされています。
象印マホービン株式会社もこの例に漏れず,1918年に創立され,
- 市川兄弟商会→協和製作所→協和魔法瓶工業→象印マホービン
のように,特徴的なゾウのマークは表情や格好を変えながらも,確実に今へと受け継がれてきました。
なお,市川兄弟商会のときは「王冠を付けたゾウ」のマークだったということで,どことなく東南アジアの雰囲気があるのも,取引先を考慮した上での結果なのでしょう(参考)。
ちなみに,後で弱点であるとわかったガラスの強度問題を解決するために,素材は今ではステンレス製となっています。
いずれにせよ,元々水筒として使われていた魔法瓶は現代では必須級の調理器具へと姿を変え,象印マホービンもタイガー魔法瓶も大阪を本拠地としていているのは以上のような背景があったからです。
象印の炊飯器のラインナップ
私にとって象印といえば,祖父母の家に魔法瓶のポットがあったことが印象的で,花柄のものは昭和時代に流行っていたそうです。
また,大手ECサイトの炊飯器ランキングでも,象印のものが当時1位となっていて,親戚の家を訪れたときにも,我が家と同じ機種が置いてあって話題が弾んだことを覚えています。
ちなみに,2024年7月23日時点でのAmazonでの炊飯器の売れ筋を調べてみると,タイガー魔法瓶・山善・シャープ・アイリスオーヤマの名前に交じって象印がランクインしていました。
機種も私がこれまでに使っていたNP-VQ10の後継機でした。
相変わらず根強い人気なのは,コスパ面で優れるからでしょう。
さて,象印の炊飯器(正確には炊飯ジャーと呼ばれる)ですが,炊飯方式の違いにより主に3つに分けられます↓
象印の炊飯器(24年7月23日取得)
圧力IH炊飯ジャー:NW-FC,NW-UT,NW-PV,NW-JZ,NW-CB,NW-MB,NW-YB,NP-RT,NP-RN
IH炊飯ジャー:NW-QA,NW-SA,NW-VJ,NP-GL
マイコン炊飯ジャー:NL-DT,NL-BX,NL-BE,NS-NH
これに加えて,IHの数が異なりセンサーも搭載する「炎舞炊き」という特許技術が使われているものがあり,それらは上で赤字にて示しました。
こちらは炎舞炊きはかまどの炎の揺らぎを再現したとのことで,その他のものは「極め炊き」と呼ばれて区別されるようです。
なお,ネーミングに関して追記すると,末端に容量を区別するための数字が付けられており,5.5合まで炊ける物は10(1.0Lに由来),1升まで炊ける物は18(1升=1.8Lに由来),その他,3合(0.54L)や4合(0.72L)を意味する05や07などもあります。
ちなみに,先の区分においては上に位置するもの・左側に位置するものほどおいしいお米が炊けるとされているわけです(逆に,初めから3つ目までのアルファベットが同じものはほとんど機能に差はありません)。
それでは次章でその差が激しい2機種を比較をしてみましょう!
象印の炎舞炊きと極め炊きの比較
ちなみに,私が今回比較するのはNW-UT07とNP-VQ10です。
後者は旧機種ということで,ここではNW-VJ10と同じだと思って語っていきますが,前者の方が炎舞炊きを採用したモデルになっていて,象印のカタログに載っている「おいしさレベル」を比較してみると,前者が6.5で後者が1.5ということで,価格も同じくらいの差(4~5倍)が付いています。
両者の主なスペック上の違いを表に書き出してみましょう↓
NW-UT07 | NP-VJ10 | |
炎舞炊き | ○ | × |
プラチナコート | ○ | × |
うまみ圧力蒸らし | ○ | × |
人工知能AI炊飯 | ○ | × |
蒸気セーブ | ○ | × |
フラットフレーム&トップパネル | ○ | × |
蒸気口セットレス | ○ | × |
当然ながら,上位機種の方にはよりおいしくなるための工夫が多く見られた他,使いやすさや手入れについてもよく考えられていることがわかります。
興味深いことに,下位機種の方が上位機種よりも良い特徴を備えていることはほぼありませんでした。
なので,絶対必要ないという機能でない限りは上位機種を選べばOKです。
おいしさの比較
この記事を書くにあたって,旧機種も引っ張り出してきて2つ同時に炊飯してみましたが,味の前に,炎舞炊き採用機種の優れている特徴を述べておきます。
まずは表面にプラチナコートがされているので甘み成分とうまみ成分がより引き出されることになり(金属イオンが化学反応を進めるため),素材に鉄を使っているために米に熱が伝わりやすくなるそうです。
炎舞炊きに耐えられるよう,釜は分厚い仕様になっていて,見た目や重さが異なります↓
肝心の味ですが,明らかに美味しいです。
左が極め炊きで,右が炎舞炊きのものですが,見た目だけでは区別できないでしょう↓
ですが,食べてみると,火(実際は熱)が回っている分,炎舞炊きのものは米粒が妙にパラパラとよく分離するのです。
また,噛まないで口の中に留めておくと,明らかに甘いのも炎舞炊きの方です。
とはいえ,極め炊きの方もそこまで大きな差はなく,これで十分と思う人も多いでしょう。
当然ながら長く噛んでいれば酵素であるアミラーゼの作用によって同じ味に近づいてくるわけで,「すべての食品は同じアミノ酸からできている」と言う主張と何ら変わりないでしょう。
とはいえ,「出来立ては美味しい」わけで,炎舞炊きの炊飯器は劣化具合も少ないです。
これには人工知能AI炊飯が働いてくれているのでしょう。
カタログを読むと,自動的に黄ばみを抑えてくれる他,夏と冬でも,新品時と何年か経った後でも同じ炊きあがりになると書かれていました。
株の話ではないですけど,長い年数をかけることで恩恵を十分受けられる炊飯器のようです。
使いやすさの比較
上位機種の方が選べるメニューが多いのですが,使わないであろう機能も目立つため,私はそれほど魅力的だとは思いませんでした。
これについては下位機種であっても同様で,例えば,以前使っていたモデルで,雑穀米やケーキやパン,はたまたすしめしやおかゆメニューは使ったことがありません。
購入してから実に6年間が経過した状態でこれです。
ただし,炎舞炊き搭載のモデルはご飯の固さだけでなくねばりまでもが調節できるので,色々と試してみる楽しみがありますし,献立によって鉄器おこげを使ってみる時もありました。
カレーだったら硬めの粘り少なめが良いでしょう。
その他,私はご飯を冷凍して保存することが多いので,冷凍ごはんモードには特に助けられています↓
冷凍保存におすすめのメニューです。電子レンジで温めても,べたつきにくく,ほぐれやすいご飯になります(取扱説明書より引用)。
この機能は極め炊きに採用されている黒厚釜では実現できません。
大気圧よりも強い1.3気圧でお米の中に水分を閉じ込め,粘りと水分率を調整できるモードです。
余談ですが,付属品の立つシャモジはサイズ感が良くてよそいやすく感じます。
お手入れしやすさの比較
内ぶたと釜を毎回洗うのは他の機種も同じですが,上位機種はこちらは蒸気口もセットレスで済むためそれ以外の作業は異物がないかの確認をするだけです。
水を入れて1時間空焚きすることで臭いが軽減できるクリーニング機能は,極め炊きを含む現行モデルのほとんどに搭載されています。
ただし,炎舞炊きの炊飯器は見た目に高級感があり,触り心地もしっとりかつざらっとしているため,価格も高さも相まって,頻繁に掃除をしたいという気分になることは確かです。
良い炊飯器を使っていれば,内釜だけでも交換する気になるでしょう。
釜には数年間の保証も付いてきますが,公式サイトの方にオーナー登録すると消耗品を市場価格より安く買うことも可能です↓
実に長い期間,使えそうではありませんか。
まとめ
以上,象印の炊飯器から炎舞炊きができるNW-UT07と極め炊き採用モデルとの比較を中心にまとめてきました。
炎舞炊きで炊いたご飯は炊きあがりから圧倒するようなものではありませんが,粒は立っていて甘さとうま味が引き出された状態で,時間が経って劣化しにくく,また,微調整もしやすいところが魅力です。
固さ以外にねばりまで細かく調節できるところと,冷凍ごはんモードは特に重宝しています。
見た目にも良い感じなので,今度両親に贈ってみることにしました。
今はふるさと納税でも炊飯器が返礼品になっていて,様々な機種から選ぶことができますが,本機種も候補に含まれていました。
今,象印の炊飯器を使っている方は,先の表の1段上または4~5つくらい左に位置する機種に変更すると確かな違いを感じ取れるように思います。
極め炊きと炎舞炊きで悩んでいる方は,折角ならば象印独自の技術である後者を是非体験していただきたいと思いますが,このくらい炊き方が変わると,炊飯前の細かな水量調節といった準備段階における工夫だけではどうにもならないほどの差が生じるのでしょう。
普通に白米を炊いて食べるだけの私でも,炎舞炊きに変えて正解でした。
普段の生活をより豊かにしたいとお考えの方は炊飯器にこだわってみてください↓
最後までお読みいただきありがとうございました。